「九谷我谷」森口信一・上出惠悟(東京)

Filed under: 個展 — @ 2019年10月15日

石川県加賀市の名泉、山中温泉より大聖寺川に沿って山間の道を上流へと進んで行くと二つのダムが見えて来る。富士写ヶ岳の麓にある我谷ダムと、その更に奥に広がる九谷ダムである。本展はこの二つのダム建設によって奇しくも水没した奥山の寒村集落、我谷村と九谷村にそれぞれ伝えられた稀代なる工藝品、我谷盆と九谷焼に魅せられた二人の作家によるお盆と器を超えて衝突する新たな取組みである。

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【我谷盆】生活道具として作られた木の盆といえば平凡であるが、この盆の並ならぬのは堅い栗の丸太をくり出し、のみ跡を残す美しいその彫刻性。

【九谷焼】大聖寺藩の官窯であったが僅か五十年で忽然と消えた色絵磁器。謎めく歴史も然ることながら、圧倒されるはその鮮色さと大胆なる絵画性

◎本展は、2013年に金沢で初めて開催され、翌年に京都を巡り、5年ぶりに開催されるものです。福光屋は約400年にわたり日本酒を造り続け、日本酒の未来のかたちを模索し続けてきました。一度は廃絶したふたつの工藝を見事に再生させているお二人の作品に、継続への力を感じます。互いの枠を超えようと模索する両者の取り組みにご期待ください。

「九谷我谷」 森口信一・上出惠悟

2019年11月1日(金)-10日(日)
(森口 在店日:11月1日2日、上出 在店日:11月1日)

SAKE SHOP 福光屋 丸の内店

〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-1-1 国際ビル1階
TEL:03-5288-5015
11:00~20:00
※土曜・日曜・祝日は19:00閉店

●オープニングレセプション
初日11月1日(金)17時〜19時30分
福光屋の季節酒を振る舞います。作家お二人との歓談をお楽しみください。お誘い合わせのうえお越しください。

 

上出惠悟「静物/Still Life」(大阪)

Filed under: 上出惠悟,個展 — @ 2019年9月8日

大阪Yoshimi Artsで3年ぶり5回目となる上出惠悟の個展が開催されます。

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stilllifeリーフレットト(中井康之/上出惠悟の新作《静物》を見るために)

上出惠悟「静物/Still Life」

2019年9月21日(土)-10月13日(日)
11:00-19:00 (日 -17:00)
月・火休
Yoshimi Arts

■ギャラリートーク
中井康之(国立国際美術館副館長)× 上出惠悟
9月21日(土) 17:00-18:00
無料、要予約
予約先:Yoshimi Arts (ヨシミアーツ) 06-6443-0080 / info@yoshimiarts.com

この度、Yoshimi Artsは2016年以来3年ぶりとなる上出惠悟の個展「静物/Still Life」を開催致します。
上出惠悟は、「幽谷」(2011)、「游谷」(2013)、「硯海の貝」(2014)のYoshimi Artsでの2014年までの個展や、2013年の「楽園創造(パラダイス)-芸術と日常の新地平- vol.3 上出惠悟」(gallery αM)では、自身の出自である九谷焼に纏わるものを俯瞰的に捉え、東洋で始まった磁器の歴史を舞台にしながら、神話的とも言える手法で磁器が持つ時間と場所について考えました。
その後、「山の熊か、熊の山か」(2015 松坂屋名古屋店 美術画廊)、「熊居樹孔」(2016 Yoshimi Arts)、「わすればなん」(2017 東京日本橋髙島屋 美術画廊X)、「磁彫展」(2018 横浜髙島屋 美術画廊・2019 松坂屋名古屋店 美術画廊)といった4年間の個展を通して、自身が置かれている環境や想いを熊と重ね合わせ、また東京藝術大学の卒展以来作り続けて来た甘蕉を突き放し、そして彫刻という上出が幼少期に学んだ手法で磁器という素材を用いることで、ひたすらに自身と向き合い、記憶という心の深い部分に触れようと試みました。
今回の個展は今年の6月に、「第14回パラミタ陶芸大賞展」(パラミタミュージアム)出品の為に制作した新作を再構成して展示致します。大学で絵画を専攻した上出は西洋絵画の一ジャンルである「静物画」に改めて関心を持ち、家業である上出長右衛門窯が作り続けている器をモチーフにしながら、全く新しい作品を陶芸展で発表しました。上出が描く「静物」を是非会場でご高覧ください。

「KUTANI CONNEXION」(東京)

Filed under: KUTANI CONNEXION,上出惠悟,個展 — @ 2018年9月8日

今回で7回目となるKUTANI CONNEXIONが開催されます。
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北陸、石川の地で明治12 年に創業した九谷焼の窯元「上出⻑右衛門窯」は、来年創業140 年の節目を迎えます。いつの時代にも古びることなく瑞々しくありたいと、同窯の六代目にあたる上出惠悟は伝統に固執し過ぎない自由な表現を続けています。上出が近年力を注いでいるのは、オリジナリティあふれる新しい絵柄や、造形の創作です。招猫やお雛さま、武者などの人形や、フクロウと漢字をモチーフにした「寿福老」シリーズは、伝統的な普遍性を感じさせつつも、全く新しいものとして存在しています。

本展では、上出と上出長右衛門窯がこれまで取り組んできた「笛吹」シリーズに代表される伝統柄に遊び心を加えリアレンジした製品や、窯の定番品、新作の数々を展示販売いたします。そして上出の夢に出て来た犬の向付(浅い皿)や野生の熊への興味など、その独特な着想にもご注目頂ければと思います。

上出⻑右衛門窯「KUTANI CONNEXION」

会期:2018 年 10 月 5 日(金)−14 日(日) 11:00-20:00 ※最終日 11:00-17:00
会場:渋谷ヒカリエ 8/ CUBE1,2,3
〒150-8510 東京都渋谷区渋谷 2-21-1 渋谷ヒカリエ 8F
上出惠悟在廊日:5日、7日、13日、14日の13時〜18時 ※予定は変更になる場合があります。
主催・企画:Yoshimi Arts

★オープニング キャンディーレセプション
 10月5日(金) 17:00- 先着でオリジナル金太郎飴進呈!

http://www.hikarie8.com/cube/2018/09/kutani-connexion.shtml

「KUTANI CONNEXION」(大阪)

Filed under: KUTANI CONNEXION,個展 — @ 2017年11月4日

新たな九谷焼との出会いと遊びの場「KUTANI CONNEXION」が三年半ぶりにうめだ阪急(大阪)で開催されます。関西にお住いの方は是非この機会にお運びください。

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霊峰白山を仰ぐ北陸、加賀國の地で明治十二年より九谷焼製造に携わる上出長右衛門窯。創業から百三十八年、初代上出長右衛門から数えて六代目にあたる上出惠悟は自らが置かれた環境と身体を遊ばせるかのように作品を発表。ハイメ・アジョンや小林幹也などのデザイナーやファッションブランド、工芸作家や酒造、製茶メーカーとの共同制作や、波佐見焼へのデザイン提供など幅広く活動しています。また自然と人間との関係から熊という存在に関心を持ち、作品制作や食のイベントを企画し、窯の職人たちと共に様々な領域に接続しながら、新たな九谷焼との出会いと遊びの場を提供しています。それはまるで古今東西の陶磁や小袖などの文物からの影響や、久隅守景や青木木米などの陶画工による指導を受けて、多様に変化し発展した九谷焼の歴史を今に体現するかのようです。
本展では長右衛門窯を代表する古典的な器の数々や、上出が遊び心を加えた新しい器、置物、長年上出が取り組んでいる作品を幅広く展覧いたします。

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目黒雅叙園で展示された映像作品「電影笛吹樂團」の展示もあります。

上出長右衛門窯「KUTANI CONNEXION」

2017年11月15日(水)- 20日(月)
10:00-20:00 (金・土 -21:00、最終日 -18:00)
会場|阪急うめだ本店 9階 アートステージ

■ギャラリートーク(語り手:上出惠悟)
11月15日(水) 14:00- (約60分)
11月19日(日) 14:00- (約60分)

「上出長右衛門窯 笛吹と風景」(東京)

Filed under: 個展,出店・出品 — @ 2017年9月22日

木々の梢が色付く十月、東京・銀座にある金沢の食文化と工芸を楽しめるdining gallery 銀座の金沢にて、上出長右衛門窯「笛吹と風景」を開催します。
弊窯の代表作である「笛吹」をテーマにした展示会になります。
本展限定の「笛吹」も販売されますので、是非ご来場ください。

笛吹風景

上出長右衛門窯「笛吹と風景」
九谷焼窯元 上出長右衛門窯が60年描き続ける笛吹と風景について

10月11日(水)—10月23日(月)

銀座の金沢
〒104-0061 東京都中央区銀座1-8-19 キラリトギンザ6階
TEL 03-6228-7733/FAX 03-6228-7035

営業時間
ギャラリー 11:00〜21:00
ダイニング  11:30〜23:00(L.O. 22:00)

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銀座の金沢「笛吹と風景」展限定笛吹。「銀(座)」と「金(沢)」のやかんをテーマにしました。

 

 トーク&ディナー

本展に伴い、上出長右衛門窯の代表作である「笛吹」をテーマに、六代目にあたる上出惠悟と、尺八奏者の薮内洋介氏による古代から近世に至る「笛吹」についてのクロストークと、金沢の旬のお料理、そして薮内氏による笛の演奏をお楽しみ頂けるトーク&ディナーを行います。

日 時  10月13日(金) 19:00-
参加費  8,000円(税込)特別会席・乾杯酒付
定 員  30名
*要予約、予約はdining gallery 銀座の金沢(03-6228-7733)まで

http://www.ginzanokanazawa.jp/event/2017/09/2017-2.html

ご家族ご友人をお誘いあわせの上是非ご参加ください。

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薮内 洋介(やぶうちようすけ) 1979年奈良県に生まれる。東京藝術大学音楽学部邦楽科卒業、及び同大学院修士課程音楽研究科修了。東京藝術大学音楽研究センター助手を勤める(2011-2013)。国内劇場・催事での演奏活動を行う。 2012年NHK大河ドラマ『平清盛』への参加・出演。 2014年NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』、2015年NHKドラマ木曜時代劇『かぶき者慶次』、2017年NHK土曜時代劇『アシガール』、2018年NHK正月時代劇「風雲児たち~蘭学革命篇~」への参加(一節切指導)。名取裕子、美川憲一、吉幾三、劇団新派など公演や劇伴録音への参加。海外公演:ブラジル(国立サンパウロ美術館、リオデジャネイロ州立大学、私立カンタレイラ音楽大学、ブラジル銀行文化センター(CCBB)、オーストリア(国立ウィーン美術史美術館)への単独招聘演奏。アメリカデンバー、韓国、クロアチア、フランス、中国)。

「上出長右衛門窯 上出惠悟展」(岡山)

Filed under: 上出惠悟,個展,出店・出品 — @ 2017年7月5日

岡山高島屋DM 明治十二年に創業した九谷焼窯元 上出長右衛門窯の技術と、窯に生まれた六代目として窯を索引する上出惠悟の感性に触れられる作品を展覧いたします。

「上出長右衛門窯 上出惠悟展」

7月5日(水)-11日(火)
10:00-19:00
*金・土  -20:00、
*最終日 -15:00
岡山髙島屋 7階 美術画廊
〒700-8520
岡山市北区本町6番40号
TEL(086) 232-1111

「Blue,White&Blue」(東京)

Filed under: 上出惠悟,個展,出店・出品 — @ 2016年10月6日

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「Blue,White,&Blue」

この度、六本木の東京ミッドタウンにある ISETAN SALONE(イセタンサローネ)にて、上出長右衛門窯 上出惠悟「Blue,White,&Blue」 を開催する運びとなりました。

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長右衛門窯のブルー

タイトルにもある「Blue&White」は、磁器の特徴的なブルーである染付(そめつけ)のことを言います。染付とは、白色の胎土で成形した素地の上に酸化コバルトを主とした絵具で模様を絵付し、その上に透明釉をかけて高温焼成した陶磁器です。約140年続く九谷焼の窯元である上出⻑右衛門窯は、この染付のブルーにこだわり長年研究を重ねて来ました。やや青みがかった白い素地に様々な図柄を描いた鮮やかな染付は、デザイナー、ハイメ・アジョンも心惹かれた上出長右衛門窯の大きな特徴を示すブルーです。

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大きなふくろうのオブジェ

本展では、染付による祥瑞という幾何学文様の大鉢、人気シリーズの笛吹の湯呑やお皿等の器類と、窯の六代目にあたる上出惠悟が描くフクロウと漢字の「寿」が同居した絵柄「寿福老(ことぶくろう)」の高さ約80cmもある大作オブジェなどを出品致します。かつては大型の壺など多く生産し輸出していた九谷業界も、需要のない現在では技術を持つロクロ師はおらず、幾度もの失敗を繰り返しながら約半年かけてようやく出来上がった寿福老の大作を、是非ご覧頂ければと存じます。

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染付の絵付ワークショップ

ISETAN SALONEの1階のプロモーションスペースにて、上記の作品や製品他、上出惠悟の代表作品「甘蕉」「栄螺」、そして「熊」 をテーマにした作品なども一部展示する予定です。さらにインターネット動画サイトなどでその製作風景が世界中にシェアされ話題を呼んだ上出長右衛門窯の主任絵付師と、上出惠悟が来場し、染付体験ができるワークショップを開催致します。

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上出長右衛門窯 (上出惠悟)「Blue,White,&Blue」

2016年10月19日(水)-25日(火)
11:00-21:00
ISETAN SALONE 1F プロモーションスペース
(東京都港区赤坂9丁目7番4号 東京ミッドタウン・ガレリア1F/2F、TEL 03-6434-7975)
ISETAN SALONE HP | http://isetan.mistore.jp/store/shinjuku/isetansalone/index.html
主催|ISETAN SALONE
協力|Yoshimi Arts

絵付ワークショップお申し込み

上出長右衛門窯の六代目にあたる上出惠悟が染付について、特にクローズアップする祥瑞についてお話し、主任絵付師の井上幸晴がYouTubeで58万回再生された「上出長右衛門窯の祥瑞画法」を生で実演。その後、湯呑もしくはお皿に自由に染付で絵付をしていただきます。描いた器は後程窯で焼きあげます。
染付について「聞く・見る・描く」と盛り沢山の内容のワークショップです。 

日時|10/22(土)・23(日) 各日①11:30-13:30/②16:00-18:00
会場|イセタンサローネ1F プロモーションスペース
定員|各回10名
参加費|8,000円(税別/材料費込)
内容|
[1]上出惠悟による染付(祥瑞)のお話
[2]絵付師 井上幸晴による染付演(祥瑞・笛吹)
[3]染付体験 ①湯呑(φ7×h8.2cm)/②平皿(φ15×h3cm)の2種類からお選びいただき、笛吹など自由に描いていただきます。 だみ(塗り)はその場で職人が行います。焼成後、12/14(水)より店頭にてお渡し。配送の場合は12/15(木)着より日付指定可
申し込み|イセタンサローネでお電話にて受付  TEL 03-6434-7975

上出惠悟個展「熊居樹孔」(大阪)

Filed under: 上出惠悟,個展 — @ 2016年6月7日

名古屋から東京を経由した上出惠悟による熊への考察が大阪Yoshimi Artsに巡回します。また同時に梅田蔦屋書店でフェアを開催し、熊に関する作品や上出が選んだ書籍等の販売も行います。どうぞ併せてご覧くださいませ。

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上出惠悟 上出長右衛門窯 「熊居樹孔」

2016年6月18日(土)-7月10日(日) →16日(土) ※会期延長になりました
11:00-19:00 火・水休
Yoshimi Arts
オープニングレセプション | 6月18日(土) 18:00-

上出長右衛門窯 上出惠悟 「Bears Live In The Hollow」フェア

2016年6月18日(土)-7月10日(日)
7:00-23:00
梅田蔦屋書店 (北カウンター前 マガジンストリート平台)
熊に関する作品、トートバッグ・バッジ・手鏡などを展示します。

Yoshimi Arts 上出惠悟「熊居樹孔」ページ
梅田蔦屋書店「Bears Live In The Hollow」ページ

熊について

古来、私達にとって最も大きくて恐ろしい獣である「熊」は同時に一番の獲物でもありました。本州、四国、九州(絶滅)にはツキノワグマ、北海道にはヒグマがそれぞれ分布しています。大陸と地続きだった時代に私たちは熊を追って日本にやって来たとも考えられています。古代より熊を追って来た私たちは熊の呼称も多く、東北のマタギはシシ、イタチ、イタズ、ナビレ、クロゲ、ヤマ ノオヤジと呼び、北海道のアイヌは熊を山の神を意味するキムンカムイと呼びました。各地域に多くの伝承や物語があり、命を奪えば丁重に祈り深く感謝をしました。このような熊への崇重は北方 ユーラシアから北アメリカまで広範囲に見られます。インディアンはシャーマニズムと強く結びつけ熊は彼らの病気を癒すとも信じられました。現在では遺伝子上人間に近い動物は猿だと明らかに されていますが、猿のいない北半球では二本足で立ち人間に匹敵する大きさの熊を自分達に近い存在と信じ「親父」、「叔父さん」、「従兄弟」、「酋長の息子」、「毛皮をまとった父」などと呼 びました。このように私達人間は熊を追い彼らの命を奪いながら、一方で神として畏れ崇めて来ました。しかしこれらは全て人間の片思いのようなもので、本来熊には何の関係もないことかも知れ ません。現在熊は絶滅の危機に瀕し、里に降りてくる熊は人を襲ったり田畑を荒らす「有害動物」として捕獲され命を奪われています。

昨年私は熊をテーマに個展を開きました。するとなぜ熊なのかと度々皆さんに訊かれますので、ここにその理由を記したいと思います。私は昨年から突如として熊のことが気にかかり彼らのことを 頻繁に考えるようになりました。しかし思い出してみますと私が熊に興味をもった発端は、たまたま「子路(しろ)」という熊の異称を知った時のことだったように思われます。陶淵明による六朝時代の志怪小説集「捜神後記(続捜神記)」の中に、「熊無穴有居大樹孔中者 東土呼熊子路」という記述があり、また江戸時代の獣肉屋でも子路と書いて「くま」と読ませていたことを知りまし た(寺門静軒著「江戸繁盛記」)。論語に詳しい方はご存知と思いますが、子路とは孔門十哲の一人仲由のことで、子路という異称の由来は、熊が住処とした樹の「孔」と孔子の「孔」をもじった 言葉遊びからの洒落です。子路のことなら中島敦の小説「弟子」(昭和十八年発表)で主人公として描かれており、私はこの小説を幾度と読み感動しています。子路は子供がそのまま大人になった 様な直情径行な性格から度々孔子に叱られます。激越でしかし素直な子路はまこと獣のように美しく、これを読むと熊と子路を結びつけた人の気持ちが腹に落ちるように理解できます。物語の最後、子路は主君を救う為に反逆者のいる広庭へと単身跳び込み、気高くも無残に殺されてしまいます。孔門の後輩、子羔と共にその場から遁れることも出来た子路が子羔に声を荒げた「何の為に難を 避ける?」という言葉が私の心の中で何度も反復されました。「何の為に難を避ける?」。里に現れる熊は一体どのような気持ちで里に降りて行くのだろう。私の中でその熊と子路の姿が妙に重な り始めました。日常生活でも植木を熊と見間違えたり、車のヘッドライトの影に熊を見たり、空に浮かぶ雲を見て熊を思ったり、実際に会えないかと山へ行ってみたり、北海道を旅したりと熊の痕 跡をっています。結局のところ私はなぜ熊なのかと自分でも判らないまま熊を心に宿してしまったのです。

上出惠悟 平成二十八年三月二日 渋谷のホテルにて

参考文献
「中島敦全集 第一巻」中島敦/筑摩書房
「江戸繁盛記」寺門静軒/東洋文庫
「熊 人類との「共存」の歴史」ベルント・ブルンナー/白水社
「ものと人類の文化史 熊」赤羽正春/法政大学出版局
「クマとアメリカ・インディアンの暮らし」デイヴィット・ロックウェル/どうぶつ社
「クマを追う」米田一彦/どうぶつ社

「東急プラザ銀座開業記念アートエキシビジョン」(東京)

Filed under: お知らせ,上出惠悟,個展 — @ 2016年4月12日

2016年3月31日にオープンした大型商業施設「東急プラザ銀座」のポスターなどのビジュアルに、上出惠悟がデザインした上出長右衛門窯 TEAシリーズの急須を使用して頂きました。また4月11日より6階KIRIKO LOUNGEにて「開業記念アートエキシビジョン”伝統と革新”展 第2期 上出惠悟」が開催されています。

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本展の為に制作された新作を含む上出惠悟と上出長右衛門窯の作品約10点を展示しています。新作は本展でのみ展示予定ですので是非この機会にお運びください。

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オープンスペースですので、ご自由にご覧いただけます。

“伝統と革新”展 第2期:上出惠悟

2016年4月11日(月)-20日(水) *18日(月)除く
11:00-23:00(平日・土)、11:00-21:00(日・祝日)
会場 | 東急プラザ銀座 6F KIRIKO LOUNGE
東京都中央区銀座5-2-1
http://ginza.tokyu-plaza.com/
*会場の都合により、上記開催日程・時間が変更なる場合あり

「KUTANI CONNEXION」(東京)

Filed under: KUTANI CONNEXION,上出惠悟,個展 — @ 2016年2月18日

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この度、渋谷ヒカリエ 8 階の 8/ CUBE1,2,3 に て、上出長右衛門窯と上出惠悟「九谷焼コネクション」を開催致します。

北陸、石川の地で明治十二年より九谷焼を製造する上出長右衛門窯は、卓越した技術を有する職人の手による磁器の成形から絵付までを一貫して行う窯元です。六代目にあたる上出惠悟は、窯のクリエイティブディレクターとして職人達と共に、受け継がれた文様や作品を踏襲するだけでなく、現代だからこそ出来る試みを重ね、私たちに新鮮な九谷焼との出会いを提供しています。その作品は日本のみならず海外でも広く評価を受けています。大学で絵画を学んだ上出は一方で作家としても活動し、工芸には囚われず自身が置かれた環境の中で身体を遊ばせながら作品の発表を続けています。本展「九谷焼コネクション」は先代より作り続けている作品と、上出惠悟が携わる上出長右衛門窯の作品、そして自身の作品をセクション毎に別け、上出が接続する様々な歴史や事柄から生まれる世界を体感出来るものとなるでしょう。

展示概要
渋谷ヒカリエ8/ CUBE1,2,3の3つに分割されているスペースの特性を生かして、手前から奥に(1)(2)(3)のそれぞれのスペースごとに特色のある展示を致します。

(1)
上出惠悟が2015年に名古屋で発表した個展「山の熊か、熊の山か」から新作を含めた作品を展示。上出が突如選んだテーマである熊は、人間にとって古くより狩りの対象として「畏怖」、そして「敬意」を持って、様々な神話や物語に登場する等、特別な関係を持ち続けています。また熊ほどたくさんのキャラクターになって子供達に愛される動物も他にいないのではないでしょうか。上出は広く熊や、熊に纏わるマタギやアイヌの文化に興味を持ち、北海道と東北を旅しています。
熊について

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上出長右衛門窯 上出惠悟 「ハマ皿 楼閣山水図」「兜」 

(2)
割烹食器を中心として作られている上出長右衛門窯。上出惠悟がデザインを担当し窯の顔となった笛吹シリーズやTEAシリーズなどの人気作品や、新作、限定作品、ハイメ・アジョンとのコラボレーション作品などボリュームを持って展示致します。点数は約150点。

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上出長右衛門窯 「湯呑 笛吹シリーズ 申年限定猿回し」、「TEAシリーズ」
小林幹也デザイン「PICNICシリーズ」、「ちょうえもん招猫シリーズ」

 

3)
上出惠悟が2015年7月に黒部市美術館で開催されたグループ展で発表した作品「SHOWCASE」を展示致します。この作品は、上出惠悟がこれまで携わった窯の製品や、自身の作品、窯の歴史を辿る事が出来る写真の数々、上出が見つけ大切に蒐集して来た小物を一つの大きな展示棚に収めた、自らの環境と想いを詰め込んだ作品です。黒部市美術館の発表以降初めての展示になります。

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上出惠悟 「SHOWCASE」 2015 (黒部市美術館「恋スル工芸展」展示風景)」

上出長右衛門窯と上出惠悟 「九谷焼コネクション
Kutani Choemon & Kamide Keigo “KUTANI CONNEXION”

2016年3月2日(水)-13日(日)
11:00-20:00 (最終日 -18:00)
入場無料
トークイベント | 3月5日(土)17:00- 上出惠悟による作品解説
会場|渋谷ヒカリエ 8階 8/ CUBE1,2,3
東京都渋谷区渋谷2-21-1 TEL 03-6418-4718 (8/運営事務局)
主催 | Yoshimi Arts
渋谷ヒカリエ 8/ 展覧会ページ | http://www.hikarie8.com/cube/2016/01/post-38.shtml

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